型紙のパターン作りのスペシャリストでファッション界のグレーダーってどんな仕事をするの?
一つの洋服に対して、デザインから仕上げのすべてを一人で完成させるということはまずありません。一般的なアパレル企業では、何人ものチームスタッフが協力しながら一つの商品を制作します。
そこで今回ご紹介する職種が、このチームスタッフの中でも欠かせない「グレーダー」という仕事についてです。はじめて聞いたという人も多いかと思いますが、洋服を制作するうえでグレーダーによる作業がないとワンサイズの服しか作れなくて困ってしまいます。
それでは早速、グレーダーの仕事ってどんなことなのか、そして仕事をするうえでのやりがいや苦労、実際にグレーダーとして活躍するにはどうしたら良いのかといったことを中心にご紹介します。
目次
グレーダーとは?その仕事内容について
パタンナーが作成した標準サイズのマスターパターンをもとに大小の各サイズ別にイメージしサイズ展開をしていくのが「グレーダー」の仕事です。
◎型紙をもとにいくつものサイズを作る仕事
服を作るときの初期段階として、デザイナーが考えたデザイン画をもとにパタナーが型紙を作るという作業があります。しかし、ここまでの作業では一つの型紙しかありませんよね。体格もさまざまな人がこのデザインの洋服を着用するので、一つのサイズだけでは足りません。
そこで必要になるのが、グレーダーの「グレーディング」という仕事なのです。グレーディングをするときには、多いときで10通りのサイズを作ることもあります。
◎アパレルCADを使ってグレーディングする!
グレーダーの仕事であるグレーディングという仕事に欠かせない道具、それが「アパレルCAD」というソフトウェアです。
グレーディングでは、単純にデザイン画や型紙の割合を変更すれば良いだけではありません。サイズを大きく小さくするほかにも、サイズによって着用したときのバランスはどうなるか、といったことを頭の中でよくイメージしながらそれぞれのサイズに合わせたパターンを作る必要があるのです。
グレーダーになるには
グレーダーに必要な資格や技能について
グレーダーになるために、必須資格はありません。
しかし、ファッション全般についての基礎知識や技術を身につけておくことはとても大切です。それに、グレーダーの仕事に絶対必要になる「アパレルCAD」というソフトは、確実にマスターしておきたいスキルです。
・CAD利用技術者資格
・3次元CAD利用技術者資格
・洋裁技術検定
・色彩検定・・・など
CAD利用技術者資格・・・設計や製図、ソフトウェアなどに関連する知識やスキルを認定するための資格です。
3次元CAD利用技術者資格・・・平面設計だけでなく立体的な設計図を作るための知識やスキルを認定するための資格です。この資格は、グレーダーのほか自動車や家電などの機械を設計開発する職業を志望している人にも有利になるとされています。
洋裁技術検定・・・洋服に関する専門的な知識や技術を有しているかを検定するための試験です。
色彩検定・・・服飾系の職種すべてに関わる検定であり、履歴書にも書くことができるので積極的な取得をおすすめします。
グレーダーに必要な資格や技能の取得難易度
年に2回実施される「CAD利用技術者資格」は1級と2級があり、全国各地で受験することができます。2級保持者であることが受験条件である1級は、建築と機械、トレースという3部門に分かれており筆記試験と実技試験があります。
合格率は3割~4割ほどで、年齢層でいえば20代から30代の受験者が多くいるようです。2級は受験資格がとくになく、筆記試験のみとなります。合格率は5割ほどです。
割合からみると難易度が高いようにみえますが、毎年の合格率はそれほど差がないので何度か挑戦していると試験の傾向が分かってきそうです。
グレーダーの平均給与はどのくらい?
グレーダーの平均月収は、初任給で20万ほどが相場のようです。
専門学校などを卒業した後にアパレルメーカーなどに就職して、さまざまな業務をこなしながら下積みの日々を送ります。
◎実力次第でポジションアップ!
実務経験やグレーダーとしてのセンスが認められれば、少しずつ任される仕事も増えていくのでチーム内でのポジションも徐々に上がって月収平均が50万円ほどになることもあります。
◎フリーランスのグレーダーは少ない、でも年収は高額!?
アパレルメーカーから独立して、フリーランスのグレーダーとして活躍する人もいますが、その数はとても少ないようです。
フリーランスになれば自分で営業活動をして仕事をとってくる、もしくは広い人脈を活かして仕事を入れるようになります。そのときの仕事のできを高く評価されれば、専属のグレーダーとして活躍することもできるのでその分年収も高額化していきます。
グレーダーのやりがいや苦労
一つの服を作るためには一人の力だけではなく、チーム全員で協力しながら進めていかなければなりません。そんなチームのなかで仕事をするグレーダーという仕事のやりがいや、苦労について以下でまとめています。
グレーダーのやりがい
・希少価値の高いグレーダーは責任感が身につく!
グレーダーはチームに一人しかないことも多いため、多い時では一つのデザイン画に10ものサイズを作るといった注文が入ったときには、仕事量も増えますし残業も多くなります。その洋服がワンサイズしかなければ、一定の人にしか着てもらえないので、同じデザインでも異なるサイズをいくつも作れるグレーダーの力が必要になるのです。
もともとグレーダーを専門にしている人が少ないことから任せられる仕事の量は多いのですが、それと同時に責任感が身につき、やり切ったあとの達成感は人一倍に感じることができます。
・いろいろなパターンを考えるセンスが磨ける!
グレーディングという専門性の高い仕事では、洋服に関するさまざまな知識を駆使してデザインの良さを損なわないようにいくつものパターンを考えるセンスがないといけません。
デザイナーやパタンナーが丹精込めて作ったデザイン画や型紙、服の雰囲気をできるだけ保ったままでサイズ変更していくのは責任重大ではありますが、それと同時に仕事に対しての充実感を抱くことができます。
そして、仕事の量が多い分、グレーダーとしてのスキルやセンスを磨くチャンスがたくさんあります。この経験を通して、デザイナーやパタンナー、そしてチームスタッフ全員に満足してもらえるパターンを完成させられれば、グレーダーとしてこの上ない達成感や大きなやりがいを感じられるはずです。
グレーダーの苦労や大変なこと
・ストレスやプレッシャーに弱い人はつらい
洋服を完成させるには、チーム全員の力が必要不可欠です。
しかし、チームの中にグレーダーは一人だけということが多いので、大量のパターンを作ることにやりがいを感じる人もいれば、反対にその忙しさから「ストレス」や「プレッシャー」を感じる人も多いようです。
・デザイナーやパタンナーとのイメージ共有がうまくいかない
グレーディングをするまえには、デザイナーやパタンナーとのイメージ共有も大変重要な作業になります。作品のコンセプトをグレーダー自身がよく理解できずに、誤った解釈をしてしまえばもう一度作り直しといったことにもなりかねないからです。
・アパレルCADをうまく使えない
グレーダーという仕事の苦労や大変さといえば、「アパレルCADをうまく使えるかどうか」ということも忘れてはいけません。
CAD利用技術者資格を持っている人であれば使い方はマスターしているでしょう。それでも、ソフトの機能性をよく理解しているからといって自分の考えているイメージを図面に当てはめられるかといえば・・・、決してそうでもないのです。
アパレルCADの使い方をマスターして、その性能を最大限に活かすためにはサイズを大きく小さくしたときのデザインイメージがきちんと頭に浮かんでこなければ良い作品を作ることはむずかしいのです。
グレーダーになるための専門学校の選び方
服飾系といえば多くの専門学校があって一つを選ぶのは大変です。しかし、学ぶ場所によって将来進む道に影響されることもあるので、定期的に開催されている学校見学などを通して慎重に学校選びをするようにしましょう。
グレーダーになるための適切な専門学校の選び方!
すでに今、グレーダーを志望している人であればファッションに関する基礎や専門的な知識、技術を学べる専門学校のほか、グレーディングをするためのソフトウェアやパソコンスキルを学べる専門学校や大学に進学するのがおすすめです。
ファッション関連の企業への就職活動で役に立ちそうなCAD利用技術者資格や洋裁技術検定、色彩検定などの資格や検定の合格を目指すカリキュラムに積極的な学校などもあります。
いまの時点でまだグレーダーを専門にするか決めかねているときには、一つのことに限らずファッション全般を広く学ぶことで将来進むべき道の選択肢を充実させるのもいいでしょう。
洋服が大好きだからアパレル関係の職に就いて、自分の手で洋服を作りたいというときにはファッションデザイナーが一番先に頭に浮かびますが、じつは一着の服を完成させるまでにはたくさんの人の力が必要になることを忘れてはいけません。
今回ご紹介した「グレーダー」がいなければ、サイズに合わせた多様な型紙を作ることができませんし、デザイナーやパタンナーがイメージするデザイン画どおりに型紙を作ることもできません。
洋服の制作チームのなかにグレーダーは一人だけということも多いので責任は重大ですが、その分大きなやりがいや充実感にもつながる魅力的な仕事です。